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長崎の町ねこ調査2013:ねこの視点から町をみる

 「長崎の町ねこ調査隊塾」は、2011年5月から長崎市内における町ねこ(内外飼いのねこ+ノラネコ)の生態を調べています。これまでの調査結果として、長崎の市街地におけるねこ密度はかなり高いことがわかりました。(「ながさき町ねこハンドブック2」2013年3月発行参照)

 長崎にねこが多いのは、1つは温暖な気候、もう1つは斜面地特有の車の入らない狭い坂道や階段がねこにとって安全な場所を提供しているからです。しかし、この安全な場所にこそ、厄介なねこトラブルが発生します。

ねこを除けるのはなぜ?

 町ねこ調査で歩いていると、水を入れたペットボトルがずらりと並べられた家、網を張り巡らせた庭や畑、トゲトゲがびっしりと敷き詰められたプランターや塀を見つけます。どれもねこが近寄るのを嫌って置かれています。その他にも、道路わきに忌避剤が撒かれていたり、ねこ除けセンサーから発生する音が聞こえてくることもありました。(写真)

 今回調査した3つの地域をマップA、B、Cにまとめました。マップAの地域では、通りに沿ってねこ除けがびっしりと並んでいます。マップBは部分的にねこ除けが集中しています。ねこ除けの数がもっとも少ないのは、マップCの地域でした。しかし、3つの地域で確認できたねこの数は、ほぼ同じでした。ねこ除けの密度に差が出てくるのはなぜでしょう?

 平成24年度に長崎市動物管理センターへ市民から寄せられた相談のうち、群を抜いて多いのが糞尿被害(242件)です。また市民へのアンケート結果によれば、糞尿による被害は回答者の半数にも上りました(「ねこについての意識調査|ながさき町ねこハンドブック3」参照)。つまりねこ困りさんの悩みの大半は、ねこの糞尿に尽きると言えます。

 ねこ除けの多い場所の特徴として (1)人家が密集している (2)車の入らない狭い路地や階段が多い (3)コンクリートばかりで土がほとんどない (4)空き地が少ない、以上の4点があげられます。ねこは掘り返されたほくほくした土、砂や砂利が混じった場所をトイレとして好みます。つまり空き地や神社、公園など土のある広い場所が近くにあれば糞尿被害は少なく、逆に人家が密集しコンクリートばかりの場所では、庭や畑に糞尿をされてねこ除けが増えていくのだろうと考えられます。

ねこになって町を歩く

 調査中に「犬やねこはマナーを守って飼いましょう、ノラネコにエサを与えない」と書かれた看板が目にとまりました。これは長崎市と長崎市保健環境自治連合会が作り、希望する自治会に配布しているものです。マップAには看板のマークがたくさんありますが、マップCは0です。この看板0202222がかけられている場所では、犬やねこの糞尿被害はより深刻であり、地域全体の問題にまで広がっていることがわかります。

 さらに調査では、以下のようなものを見つけることができました。

(1)車のボンネットやバイクのシートに置かれたトゲトゲ

(2)道路わきや屋根に散布した忌避剤

(3)尿臭

(4)放置されたままのキャットフード

(5)ねこのためのトイレやハウス

 路上にエサを放置したままにしておくと鳥が集まり、二次被害が起こります。強い尿臭はオスねこのマーキングの臭いです。去勢すれば、尿臭も少なくなります。

 観察調査に加えてねこについてのインタビューも試みました。ねこの被害を切々と訴える人もいれば、ねこに無関心な人、町中を歩くねこに寛容な人もいて、同じ地域内でも住民感情はさまざまでした。しかし、ねこが好きであれ、嫌いであれ、ねこの糞尿にはみなさん頭を悩ませているようでした。試しに土や砂をいれたトイレを設置し、そこにねこを誘導できれば、庭や畑の糞尿被害は減るのかもしれません。少なくともペットボトルやトゲトゲよりは効果がありそうです。

 「昔に比べてねこが減った」という言葉をどの地域でも聞きました。その理由として (1)地域の人口が減り、それにともなってねこも減少 (2)室内飼いの増加 (3)不妊化手術の普及が考えられます。室内飼いや不妊化手術の大切さは、たしかに飼い主の間に広がってきています(「ねこについての意識調査|ながさき町ねこハンドブック3」参照)。

 時々ねこの目になって町を眺めてみてください。私たちの身近な存在である町ねこと地域の人々の関係がしだいに見えてきます。そして静かにじっくり周りを観察すれば、ねこトラブルを解決するヒントがすぐそばに隠されているのかもしれません。

中島 由美子

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