Monthly Archives: 3月 2014

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人とねこのよりよい関係をめざして

 長崎の町ねこ調査隊塾は、2011年(平成23年)5月に長崎のねこと町に興味のある人たちが集まり、活動をスタートしました。

 私たちは、まちなかで見かけるねこを「町ねこ」と呼んでいます。飼い主のいないノラネコのほか、家の内と外を自由に行き来する飼いねこも含みます。私たちの調査では、長崎の市街地におけるねこ密度はかなり高く8.8~13.5匹(1haあたりのねこの数)でした。長崎で見かけるたくさんの町ねこたちは、温暖な気候に恵まれ、車の侵入しない路地や階段などの安全な居場所を持ち、ねこを大切にする人たちからエサをもらい生きています。

 1,935匹、この数字は長崎市のねこの致死処分数(平成24年度)です。飼いねこ、ノラネコを問わず、望まれない子ねこたちが動物管理センターに持ち込まれています。その他にも病気や事故、栄養失調、鳥などによる捕獲などのため、生後半年を生きのびる子ねこは全体の20%以下に過ぎないのです。

 また、ねこの糞尿や鳴き声、侵入などの被害に困っている「ねこ困りさん」も少なくありません。清潔で快適な住環境を望む人とねこを大切に思う人の間に深刻なトラブルもおきています。

 長崎の町ねこ調査隊塾は、町ねこの実態を観察・記録し、データとして蓄積してきました。また町ねこのありのままの姿を知ってもらうために写真展や講座を開催しています。私たちは人とねこのよりよい関係をめざして、これからも活動をつづけていきます。

長崎の町ねこ調査隊塾のブログ

URL: http://www.machineko.org/

メールマガジン「町ねこ通信」を発行しています。ご希望の方はご連絡フォームよりお知らせ下さい。

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ねこ島の幸せなねこたち

 福岡県に「ねこ島」と呼ばれる島があるのをご存じですか? 福岡県新宮町にある相島(あいのしま)は万葉集や続古今集にも歌われた歴史ある島であると同時に、「ねこ島」と呼ばれるほどたくさんのねこが住んでいることでも知られています。1~2時間もあれば1周できるほどの島内に200匹以上のねこが住んでいた時期もあったそうですから「ねこ島」と呼ばれるのも納得です。

 不漁によるエサ不足でねこの数は以前より少なくなりましたが、それでも観察会当日は30匹を超えるねこたちに会うことができました。

 波止場や海岸、道路の真ん中、トラックの荷台……ねこたちは思い思いの場所でのんびりと過ごします。撫でてもらおうと、鳴きながら近寄って来るねこもいました。

 これだけ数が多いとトラブルも気になるところですが、トゲトゲなどのねこ避け対策もほとんど見かけず、ねこによるいたずらにひどく困っているという声も聞かれませんでした。

 島の方に「ねこを飼っている人はいますか?」と聞いてみました。すると「ねこはそこらへんに散らばっとる」という返事。島の人にとってねこは「飼う」のではなく、共に暮らす「仲間」なのかもしれません。ねこのエサは魚のアラや残り物など、島の人たちはキャットフードをわざわざ買ってまであげることもなく、ねこがケガや病気をしても島外の動物病院まで連れて行くことはなさそうです。しかし、どこにどんな色や柄のねこがいるのか、島の人たちはよく知っています。ねこについて語る口ぶりがとても暖かく、ねこが大切にされていることを感じました。

 相島のねこたちは空気のように人の暮らしに溶け込み、人とほどよい距離を保ちながら生きています。このような人とねこのつながりは、ねこにとっても幸福なことかもしれないと思いながら、島を後にしました。

浜田 ひさえ

相島のしまねこ観察会は、2013年11月16日(土)に開催。長崎、福岡、北九州、宮崎から集まった参加者は17名。20数年前に相島でノラネコの観察、研究をされた山根明弘さんにご案内いただきました。

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ながさきのまち・ねこ・ひとを考える

ながさきのまちとねこ

 「ながさきのまちはねこが多い」と言われます。確かに、まちで一度もねこに出くわさない日というのは少ないかもしれません。ながさきで暮らしているとそれがあたりまえに思えますが、よそから引っ越してきたひとや観光客からすると、まちにねこが溶け込んでいる風景は、ながさき独特のものに感じられるようです。

 ながさきにこれほどねこが多いのは、車が通りにくいまちの造りや冬でも温暖な気候が、ねこにとって住み心地がよい点が挙げられます。さらに「ねこに気を配るひと=ねこ好きさん」が多くいることも、まちねこたちの暮らしを大きく支えているように思われます。餌をやったり、寝床を提供したり、時には病気やケガの手当てをしたり。どこのまちにもそういうひとはいますが、ながさきはそういうひとの数がとりわけ多いまちだと感じます。ただし、ねこ好きが多いからねこが多いのか、それとも、ねこが多いからねこ好きが多いのかは、タマゴとニワトリですけれどもね。

まちねこ調査での発見

 まちねこ調査でまちを歩いていると、ねこの姿は見えなくても、確かにこのまちにはねこがいる、とすぐにわかることがあります。餌が半分残ったお皿、物陰に目立たぬように置かれた発泡スチロールのねこハウスなどは、そのまちのねこ好きさんがねこに気を配っている証です。

 一方で、あたりに漂うねこの糞尿臭や、そんなねこのオトシモノに迷惑するねこ困りさんが設置する侵入防止ネット、ねこ避けのトゲトゲ、餌やり自粛を求める種々の看板・貼り紙もまた、まちねこがそこにいる―それもかなりたくさんいることを示しているのです。

 こうした「ねこ存在の手がかり」は、角度を変えて眺めれば「ねこに対するまちのひとびとの気持ちの表われ」でもある、ということに気づくまでにはさほど時間はかかりませんでした。あからさまに示された「ひとびとの気持ち」を地図上に展開すれば、〈まち〉と〈ねこ〉と〈ひと〉が複雑に入り乱れ、絡み合う現状が手に取るようにわかります(「町ねこ調査マップ|ながさき町ねこハンドブック3」参照)。

 さらに聞き取りをまじえた調査を重ねると、それほど絡み合った3者の関係は、実は驚くほどかみ合わず、すれ違っている、ということもまたわかってきたのです。

すれ違うまち・ねこ・ひと

 ねこ好きさんから例を始めてみましょう。ほとんどのねこ好きさんは、ねことは正面から向き合っているように見えますが、ねこのオトシモノとそれに困るねこ困りさん、さらにそれがまちの環境を損なう問題については見て見ぬふりをするケースが少なくありません。ねことは向き合うけれど、ねこ困りさんやまち(の環境問題)とはすれ違ってしまっている。自分を慕ってくれるねこたちの健気でかわいらしい部分だけを満喫して、それ以外の困った部分は切り捨ててしまっているのです。

 一方、ねこ困りさんは、まちの環境には少なからず気を配り、それを損ないかねないねこや餌やりさんのことを快くは思っていません。では、ねこ困りさんは、ねこや餌やりの問題に正面から取り組むのか、というと決してそうではなく、「ねこが自分のまちからどこかへ出て行ってくれればいい」「餌やりは禁止すれば(ねこはどうなっても)いい」と考えているケースが大半です。自分のまちは大事に思っているけれど、ねこやねこ好きさん、あるいは隣のまちとはきちんと向き合えていない。

 ねこは、単なる迷惑な糞尿製造器ではありませんし、かといって可愛らしく癒やしを与えてくれるばかりの存在でもありません。そんなねこを愛するのも、逆に不愉快に思うのも、それぞれに理由はあるでしょうが、その意見の食い違いは住民間のトラブルを引き起こします。ねこ好きさんとねこ困りさんが正面から向き合って、互いの意見にも耳を傾けながら、よりよいまちづくりへと進めていければよいですが、現状は「すれ違い」です。

まち・ねこ・ひとを向き合わせる

 では、この「すれ違い」はどのように交通整理すれば、お互いがきちんと向き合えるのでしょうか。

 そもそも、まちのねこ問題について、ひとびとが正面から向き合って解決に取り組む活動としては「地域ねこ活動」があります。住民間の話し合いを通じて、ノラねこを地域で管理していくための合意を形成し、不妊化手術を施して徐々にねこの数を減らしていくのが、その活動の主眼です。

 しかし「地域ねこ活動」を実際に進めるにはまだまだ障害が多い、というのが実情です。まち・ねこ・ひとが絡み合いながらもすれ違っている現状では、それぞれが伝えたいこともなかなかうまく伝わらない。話をする前提・共通の土台がないのです。

 どこにどんなねこがどれだけいるのか、それに対してひとびとはどんな思いを抱いているのか。まちねこ調査によって明らかになるねこの生息データや調査マップは、互いに異なる意見を持つひとびとが話をするための前提・共通の土台になるとわたしたちは考えています。

 まちねこ調査を通じて、ひとがきちんとねこと向き合い、まちと向き合い、他のひとびとと向き合う。そのことが、ながさきのまち・ねこ・ひとのよりよい関係を築いていくための第一歩になる。そんなふうにわたしたちは提案したいと思います。

長崎の町ねこ調査隊塾・副塾長 中村 淳

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長崎の町ねこ調査2013:ねこの視点から町をみる

 「長崎の町ねこ調査隊塾」は、2011年5月から長崎市内における町ねこ(内外飼いのねこ+ノラネコ)の生態を調べています。これまでの調査結果として、長崎の市街地におけるねこ密度はかなり高いことがわかりました。(「ながさき町ねこハンドブック2」2013年3月発行参照)

 長崎にねこが多いのは、1つは温暖な気候、もう1つは斜面地特有の車の入らない狭い坂道や階段がねこにとって安全な場所を提供しているからです。しかし、この安全な場所にこそ、厄介なねこトラブルが発生します。

ねこを除けるのはなぜ?

 町ねこ調査で歩いていると、水を入れたペットボトルがずらりと並べられた家、網を張り巡らせた庭や畑、トゲトゲがびっしりと敷き詰められたプランターや塀を見つけます。どれもねこが近寄るのを嫌って置かれています。その他にも、道路わきに忌避剤が撒かれていたり、ねこ除けセンサーから発生する音が聞こえてくることもありました。(写真)

 今回調査した3つの地域をマップA、B、Cにまとめました。マップAの地域では、通りに沿ってねこ除けがびっしりと並んでいます。マップBは部分的にねこ除けが集中しています。ねこ除けの数がもっとも少ないのは、マップCの地域でした。しかし、3つの地域で確認できたねこの数は、ほぼ同じでした。ねこ除けの密度に差が出てくるのはなぜでしょう?

 平成24年度に長崎市動物管理センターへ市民から寄せられた相談のうち、群を抜いて多いのが糞尿被害(242件)です。また市民へのアンケート結果によれば、糞尿による被害は回答者の半数にも上りました(「ねこについての意識調査|ながさき町ねこハンドブック3」参照)。つまりねこ困りさんの悩みの大半は、ねこの糞尿に尽きると言えます。

 ねこ除けの多い場所の特徴として (1)人家が密集している (2)車の入らない狭い路地や階段が多い (3)コンクリートばかりで土がほとんどない (4)空き地が少ない、以上の4点があげられます。ねこは掘り返されたほくほくした土、砂や砂利が混じった場所をトイレとして好みます。つまり空き地や神社、公園など土のある広い場所が近くにあれば糞尿被害は少なく、逆に人家が密集しコンクリートばかりの場所では、庭や畑に糞尿をされてねこ除けが増えていくのだろうと考えられます。

ねこになって町を歩く

 調査中に「犬やねこはマナーを守って飼いましょう、ノラネコにエサを与えない」と書かれた看板が目にとまりました。これは長崎市と長崎市保健環境自治連合会が作り、希望する自治会に配布しているものです。マップAには看板のマークがたくさんありますが、マップCは0です。この看板0202222がかけられている場所では、犬やねこの糞尿被害はより深刻であり、地域全体の問題にまで広がっていることがわかります。

 さらに調査では、以下のようなものを見つけることができました。

(1)車のボンネットやバイクのシートに置かれたトゲトゲ

(2)道路わきや屋根に散布した忌避剤

(3)尿臭

(4)放置されたままのキャットフード

(5)ねこのためのトイレやハウス

 路上にエサを放置したままにしておくと鳥が集まり、二次被害が起こります。強い尿臭はオスねこのマーキングの臭いです。去勢すれば、尿臭も少なくなります。

 観察調査に加えてねこについてのインタビューも試みました。ねこの被害を切々と訴える人もいれば、ねこに無関心な人、町中を歩くねこに寛容な人もいて、同じ地域内でも住民感情はさまざまでした。しかし、ねこが好きであれ、嫌いであれ、ねこの糞尿にはみなさん頭を悩ませているようでした。試しに土や砂をいれたトイレを設置し、そこにねこを誘導できれば、庭や畑の糞尿被害は減るのかもしれません。少なくともペットボトルやトゲトゲよりは効果がありそうです。

 「昔に比べてねこが減った」という言葉をどの地域でも聞きました。その理由として (1)地域の人口が減り、それにともなってねこも減少 (2)室内飼いの増加 (3)不妊化手術の普及が考えられます。室内飼いや不妊化手術の大切さは、たしかに飼い主の間に広がってきています(「ねこについての意識調査|ながさき町ねこハンドブック3」参照)。

 時々ねこの目になって町を眺めてみてください。私たちの身近な存在である町ねこと地域の人々の関係がしだいに見えてきます。そして静かにじっくり周りを観察すれば、ねこトラブルを解決するヒントがすぐそばに隠されているのかもしれません。

中島 由美子

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町ねこ調査を始めよう!

Q. 「町ねこ」とは?

 まちなかを自由に歩き回るねこのことです。いわゆるノラねこのほか、家の中と外を行き来する飼いねこも含みます。

 

Q. ねこ調査ってなに?

 子どもから大人まで、だれもが知っているねこ。しかし、意外にもその生態はよくわかっていません。あなたの身近にいるねこたちをじっくり観察し、その頭数や行動範囲を記録します。

 

Q. ねこ調査の方法は?

 特別な道具も技術もいりません。だれでも手軽にできます。

(1)ねこの特徴をつかむ

 ねこを見つけたら、大きさ、体格、しっぽ、目の色、毛柄や色などの特徴をカルテに書き込みます。(ながさき町ねこカルテ参照)

(2)ねこに名前をつける(個体識別)

 カルテに記入することで、ねこを区別できるようになります。同じシロクロのねこでも、その模様によって違うねこだとわかります。そしてそのねこにあなたの好きな名前をつけましょう。

(3)地図にマークする

 たとえば白いねこの「シロ」を見かけた場所を、観察エリアの地図上にマークします。観察を続けると、シロの行動範囲がわかるようになります。同じように他のねこもマークしていくと、そのエリアのねこの数とその行動範囲を記録できます。

 

Q. カルテの描き方?

 見つけたねこをその場でカルテに描きこむのは上級テクニック。まずはカメラで撮って、あとから塗り絵のように色や模様を色鉛筆で描き入れてください。色は黒、黄、茶、灰、緑、青があればいいでしょう。

 

Q. 写真の撮り方?

 町ねこは警戒心が強いので、いきなり近づくとさっと逃げてしまいます。静かにゆっくり忍び寄ってシャッターを押します。顔の正面だけでなく、胴体からシッポまでしかも左右両側といろいろな角度から撮影して下さい。撮影に熱中するあまり周りが見えなくなることがあります。交通事故にはくれぐれもご注意を!

 

山根明弘『わたしのノラネコ研究』さ・え・ら書房(2007年)

ねこ調査についてさらに詳しく書かれています。ぜひ、お読みください。Amazon の購入ページはこちら