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のらねこはじまり物語

 時は奈良時代、ありがたい経典をネズミから守るために中国からやってきたねこ。舶来高価なねこは高貴な方々の愛玩動物として、ひもに繋がれて飼われていました。

 時は下って江戸時代、庶民にも広く愛されるようになったねこですが、相変わらずひもに繋がれて飼われておりましたところ貞享2年、あの有名な「生類憐みの令」によりねこのつなぎ飼いが禁止され、晴れてねこは往来を闊歩する自由を肉球につかみ取りました。

 さらに時は下り明治32年、ペストの日本上陸にあたり日本細菌学の父、北里柴三郎氏は政府に「すべての家で必ずねこを飼うべし」と進言。これを受けて明治42年、警視庁は「管下一般ニ対シ飼猫奨励ヲ告知ス」と告諭をするに至り、ねこのおかげか伝染病予防法のおかげか急速にペストの勢いは減少し、昭和5年完全に撲滅されたのです。

 しかして一家に一匹ねこ運動のあと、残されたねこたちはと言うと一般家庭、とくに農村部においては昔と変わらず一定の距離をもって人と共生してきましたが、ここ数十年の急激な社会環境、住環境の変化に伴い、悲しいかな益獣から害獣扱いされるようになったのであります。

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