長崎伝習所「長崎の町ねこ調査隊塾」主催公開講演会
「町ねこ調査を始めよう! 」
講師:山根明弘氏(北九州市立いのちのたび博物館 学芸員)
公開講演会「町ねこ調査を始めよう!」は
2011年6月12日(日)14:00~16:00、
メルカつきまち(長崎市築町3-18)において開催されました。
町ねこ通信通巻11号は、通巻10号(講演内容のまとめ)に続き、
講演会の後半に行われました質問コーナーをレポートします。
講演会では、山根明弘さんのお話が終わった後、
15分の休憩をはさみ、質問タイムを設けました。
講演開始前に配りました質問用紙に山根さんへの質問を書いていただき回収、
副塾長の中村さんが休憩時間にそれをまとめました。
そして山根さんと中村さんの一問一答の形で質問コーナーは進行していきました。
提出された質問は15件、それを3つに分類しました。
1) ねこの生態についての質問
2) ねこ調査についての質問
3) 調査の活用についての質問
1) ねこの生態について
Q:メスはどうやってオスを選んでいるのですか?
A:近親交配を避けるために、外グループのオスを選んでいるのではないか。
Q:メスは複数のオスの子を産みますか?
A:一腹で3匹のオスの子を産んだ例があります。
田舎のねこと都会のねこを調べて比較した研究があり、
田舎のねこはねこの密度が低いから、父親は1匹だが、
都会はねこの密度が高く、一腹で複数の父親の子が生まれている例もあるそうです。
Q:オスねこ同士のケンカは止めない方がいいですか?
A:止めるのはいいですが、ケガをすることがあるので気をつけてください。
オス同士に力の差があれば、ケンカにならない。
力が拮抗しているオス同士が争います。群れの順位付けでしょう。
Q:出産について
A:餌やりをすればするほど、子ねこがたくさん生まれてくるのは、生物学的に正しい。
餌やりの判断はその人に任せますが、餌をやるにしても
後のことを考えてやって欲しい。
Q:猫エイズは人にうつるか?
A:人にはうつりません。
2) ねこ調査について
Q:調査をする時間は?
A:おもにねこが出て来る午後3時から6時に調査します。
Q:夜も調査していますか?
A:夜に町中で調査するといろいろなトラブルに巻き込まれる可能性があるので
夜はしていません。他に、北九州市では調査する人は腕章をつけています。
Q:調査をしていて、「私もやってみたい」という声はありましたか?
A:見学に来る人はありましたが、定着はしなかったですね。
Q:調査地域を地形で分ける、交通事情で分けるのは?
A:北九州市では、やりやすい場所を選んだら、
偶然にも3つの特徴ある地域が調査対象になりました。
Q:町ねこカルテのように絵にすることのメリットは?
A:写真と併用するのがベストです。写真で撮れない部分を絵で描く。
情報は同じカードに書き足していき、他の人と共有します。
Q:家の内外飼いのねことノラネコの見た目での判断は?
A:毛並みと人に慣れているかどうか、でしょうね。
飼い猫といった場合は、
1) 家の中で餌をやっているか?
2) 病気などの時に病院へ連れていくのか?
3) 家族の一員としているか?
このうち少なくとも2点を満たさなければ飼い猫とは判断しないようにしています。
3) 調査の活用について
Q:調査データをどういう方向に活かせばいいでしょうか?
A:ねこの密度がわかれば、不妊手術のコストがわかります。
手術するかどうかは別として、議論にまではこぎつけて欲しい。
Q:殺処分を激減させている熊本市との交流は?
A:自治体によって事情は違います。
持ち込みねこが圧倒的に多い自治体と熊本市を
単純に比較することはできません。ケースバイケースでしょう。
調査することですぐに殺処分を減らすことはできないでしょうが、
野垂れ死にするねこ、不幸なねこを減らしたいと思います。
質問コーナーのまとめは以上です。
このQ&Aは山根さんに一部加筆訂正していただきました。
ご多忙のところ、快くご協力いただきました
山根さんに感謝申し上げます。
講演会を終えて
長崎の町ねこ調査隊塾がスタートしてほぼ2カ月が過ぎようとしています。
その間によく聞かれたのが
「町ねこ調査って、何ね? ねこば追いかけるとね?」
であり、
「調査して、そればどうすると? 何の役に立つとね?」
でした。
公開講演会「町ねこ調査を始めよう!」に参加して下さった方々には
少なくとも町ねこ調査がどんなものか
そしてその意義も十分伝わったのではないかと感じています。
町ねこ通信通巻10号と11号では
講演会に参加できなかった方のために
講演会の内容をまとめました。
また、ながさき町ねこクラブ&長崎の町ねこ調査隊塾のブログでも
講演会の報告をしています。
山根さんはお話の中で、次のように指摘されました。
ともに調査をしている動物愛護推進員の方たちは、
ねこの殺処分を減らしたいという気持ちでネコ実態調査に協力して来られたが、
データを行政に投げかけても、行政は動かない。
財政的なむずかしさもある。そのことでボランティアのモチベーションが上がらない。
データを積んでいってもねこを救えない。これが今直面している問題点。
確かに町ねこ調査は毎日殺処分されていくねこの命を直接救うことはできないし、
ねこの糞尿や庭荒らしなどの被害をすぐに食い止めることもできません。
ねこの殺処分や悲惨な環境で生きるノラネコを減らすためには、
行政が主導して、長崎市全体で
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